「メンバーは今の所、俺以外は一人しかいない」
だが部屋は三つあるので、もう一人増えても問題はないだろう、と男は言った。
ゲートから離れ、ショップに向かって歩を進める。
「…そのアークスは、男か?」
「……? 男じゃないが、何か不都合が?」
恋愛的な対象かと尋ねたかったが、こちらの意図には気づかなかったようだ。
「…希望する職種は何だ?」
同じメンバーの女性アークスは、バウンサーとテクターを兼任しているらしい。
男はレンジャーとテクターをマスターしているので、できればそれ以外の職種を選んでもらいたいのだろう。
スキル等の実践的な情報の直接交換も、グループ内では必要事項だからだ。
アークスが各々の職種の特性を活かして、敵であるダーカーに立ち向かうために。
「ハンターとファイターを希望している」
使っていくうちに変更もあるだろうが、と付け加えると、男はわずかに目を見開いた。
長い前髪で顔の大半は隠れているが、片方だけ覗く薄い緑の瞳は意外と大きい。
つり上がった目を縁取っているのは濃い色の睫毛だ。
高い身長や広い肩幅と反比例して、実は童顔なのではないかと思った。
「それは助かる。…足りないディスクや武器や防具はこっちで揃えよう」
アークス同士が組む利点は、職種が未成熟なままでも、グループ内で強化に必要な道具がすぐに揃えられる点だ。
短期間で戦力を増強できるので、多くのアークスは二人以上のグループを持っている。
前線で戦うリーダーを補佐することが本来の目的だが、バックアップを行えるアークス――即ち二軍を育てることもできるので、一石二鳥のシステムになっていた。
「質問は?」
促してみたものの、特に思いつかないらしい。
「…ミーティングは夜行う。任務を受けるときは、事前に確認してくれ」
「わかった」
「こっちからは、それだけだ。…時間があれば、これからルームに案内するが…?」
他に聞きたいことはあるかと空気で促され、感じていたことを口にした。
「私は、おまえの恋愛対象になるか?」
-2016/01/28
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