何なのだろう、このアークスは。
一目見るなり頭に浮かんだのは、単純な疑念だ。
同居人の腰を抱きながら、額の前に片手を翳し、短い動作だけでこちらに挨拶をした、黄色いキャストは。
何なのだという疑問は、すぐさま抱かれている知人のアークスへと向けられた。
「vedaだ」
自分を慣れた手つきで抱き寄せているキャストに代わって紹介をする。
どうしてこうなったのかという経緯についての釈明が台詞の後に続くかと思ったが、hibanaは勘を働かせ、気を利かせてやることにした。
「hibanaよ」
名乗るだけで充分だろう。
アークスとしての詳しい情報を得たければ、配備された情報端末を探れば事は足りるからだ。
マイルームに備え付けた中華風の長椅子に腰掛けたままの二人の男の横を通り過ぎる。
大方、新しい恋人だろうと見当をつけ。
知り合いの色恋に首を突っ込むつもりはなかった。
「これから、ここで暮らすことになる」
「………」
masigの一言にも眉ひとつ動かさず、hibanaは改めて新しいルームメイトを一瞥した。
-2016/01/20
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