それはごく普通の朝だと知覚していた。
自分たちのような中堅と違って、ダーカー――それらを統べる者――ダークファルスとの戦闘がメインの第一級アークスの一人であるmasigは、そもそも帰還が遅い。
大敵との戦闘が長引くこともあれば、終了後の各種処理や身体メンテナンス、オペレーターへの報告などの雑務に同程度の時間を割くからだ。
その上、実践練習や肉体鍛錬もスケジュールに加えていれば、あっという間に時間が過ぎる。
覚醒後、アークスとしての責務を果たすため、部屋を横切ろうとふと見下ろしたベッドの上にいたのは、長袖とショートパンツが特徴の青いトレーニングウェアに身を包んだまま横たわる、長身のアークスだった。
「………」
女のアークスは別部屋だったが、男同士なので自分たちは同室だ。
部屋は三つあるが、出入り口のある中央の部屋は、男が本職の傍らで熱心に研究しているクラフト関係の機材が置いてあり、稀にそれらの依頼を他のアークスから請けるため、ルームには施錠をしていない。
私室は残りの二部屋となるため、必然的にこのような形になったのだが。
男が眠っている姿を見たことはあまりない。
活動する時間帯がばらばらであったためと、マイルームでなくても、任務を終えたアークスが仮眠する場所はシップの各所に設えられていたからだ。
そこで休むことも多かったので、戦闘から帰還した男の姿を見たのは一日一回の夜のミーティング以来。
どんな装いで横臥しているのか知ったのも、今回が初めてだったのかもしれない。
窮屈ではない恰好で寝ているのだろうと思ったが、普段は見せない地肌を晒し、シーツの上で浅い寝息を吐いていた。
肌蹴られた裸の胸が上下し、閉じられた瞼は一見して思ったがやはりおさない印象だ。
よく鍛えられた胸筋や腹筋の隆起と体の線を感心しながら目で追っていくうちに、不意に異変に気がついた。
-2016/--/--
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