second generations ◆ ほもでしょうとも-


 ケビンマスク、ホモ疑惑勃発。
 出所は素敵に超人オリンピック最終予選。
 ケビンマスクに指名されることを待ちわびた数多の女性軍を押しのけて、手を差し伸べた先には謎の超人。どう考えても男。どう見ても、の間違いかもしれなくても。
 信じられない、のは言わずもがな2世ことキン肉万太郎。予選も忘れてギャルと戯れる場だと勘違いしているからどうしても懐疑の目線。他の連中も予選だということそっちのけで美女を指名することに必死。なのにその所業。性根を疑う。
 まさか、恋人をこの会場に連れてきているとは。
 いや、もしかしたら奥さんかもしれない。
 なるほど、考えてみればK.K.D.(火事場のクソ力)奪取の偉業後めっきりふにゃけたと思われたケビンの性格が少しはびしっとしたのも奥さんをもらったからか、と思えなくもない。くそう。くやしい。ボクにだって凛子ちゃんというフィアンセが…!
 そうこうのたまっている間に、当のかわい子ちゃんはよりにもよってジェイドに選ばれるという悲劇が今まさに。
 最終的に脂肪フンドシオヤジYONEO!と組むことになったのも、すべて男を選んだケビンが悪いのだ。
「おい、ちょっと、ケビン」
最終予選の説明を受けるために集まったところを、肩をちょんちょんごめんなさいよ。
「………」
 無言の無愛想のまま顔が動く。マスクマンなので顔なんてあってなきに等しい。
「人のこと言えないけどさ〜、あんなカワイコちゃんたち押しのけてそいつ選ぶなんて、もしかしておまえってホモなんじゃん?」
 結構深刻にシリアス。普段のがはは笑いができる状況でもなし。
「………」
 反応なし。隣の謎の恋人も終始無言。というか、相手にされていないのかもしれない。
 じれったいなあ、とどうしても白状させたいわけのわからない衝動に駆られて、隣を襲撃。
「おい、そこの。悪いようにはしないから、正直に話せ。おまえケビンの奥さんなんだろ?」
 お鉢は謎の超人に。小さいから、耳打ちはしやすい。
 黙秘、だったが、目線はこちらを見ている。目しか出ていないから、表情はわからない。まるで仮面夫婦、などとそのまんまなことを思いながら答えを待つ。
 万太郎には確証があった。奥さんでなければ、ケビンがいつもどおりな自信に満ち溢れた態度で、正義超人の祭典に現れるはずがない。d.M.p.(デーモンプラント)を出て、悪行、正義のどっちつかずの超人になってぷらぷらしていたときと違って、今はどことなく肝が据わっているように見えたからだ。というか、無駄に余裕に満ち溢れていると言うか。結婚すれば男は変わる、とかなんとか、父スグルから聞かされたようなそんな気もする。
「愛人だ」
 思わず聞き逃すところだった。さらりと言って退けたので、もう一度、とねだる。耳を疑うことを聞かされたときに取る行動。この際、恥も外聞もない。
「愛人と言ったんだ」
 ただこちらを見ているだけでいささかの照れも見うけられない視線。固まる万太郎。我関せずのケビン。
 謎の超人クロエの思考回路は以下。
 ケビンのセコンドにつくパートナーとして、女房役が妥当なのだとしたら確かに万太郎の言うとおり自分は『奥さん』なのかもしれない。だが、それはそれで表現的に世のケビンマスクの女性ファンを敵に回すようなものだろう。であれば、それよりもっと格下の存在。愛人が妥当だろうかということに落ち着く。多分、深い意味はない。
 なるほど、とやけに納得する万太郎。さすがに男ではロビン家を継げないから愛人なのか、とうんうん頷く。そして自分に当てはめ唸る。凛子ちゃんを正妻に向かえても、その他大勢のお店のお姉さんたちは愛人にしてしまえば結果オーライ。世間にとがめられることもないだろう。
 お目付け役ミートが万太郎の側にいて、その心理を読んでいたら間違いなくそれはないとツッコミチョップをお見舞いしただろう。それくらい、自己中心的な男だ、キン肉マン2世は。
 妥当な回答を得て、陣地に戻って行く超人レスラーを見送って。

「クロエ」
 視線を泳がせていた人物を名指しする。黒い影に呼ばれた男が振り向く。マスクに浮かぶはっきりとした双眸。宿る感慨は無に等しい。
「愛人は正妻にはなれないことが多いぞ」
 コートに腕を突っ込んだままそっぽを向いている。何かの揶揄か、とクロエ。
「なる気がないから問題はない」
 愛想のない応酬。真意の掴めぬやり取り。
 じゅ〜っとタレが焼けるのが美味いのが、焼き鳥。

 万太郎、不意の疑問。後方で顔を向き合わせることなく、前方を睨んで佇んでいる二人をちらりと一瞥し。
 もしかしてケビンの奴、尻に敷かれてたりしてな〜。
 超人の中では強面とは程遠い感の女房に、べしべし叩かれている世のオヤジの姿をケビンに当てはめてほくそえむ。これを世間に公表すれば、超人気超人ケビンマスクの人気はがた落ち。なぜかそれに反比例するように上がるのが自分の人気。根拠は説明するだけ時間の無駄。省く。
 ホモさまさまじゃ、とにんまりした横には、脂ぎった佐々木米男がスマイルスマイル。二人の空間は、ケビンたちと似ているようで似ていなかった。
 一方地獄、一方沈着。
 大会委員長イケメン・マッスルの開催宣言をさえぎって、断末魔が海上特設スタンドに響き渡ったとか。


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2002.01.20up

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