「…開け」
眼下で尻餅を付く相棒に、脚を開けと命じる。
一瞬何のことかと驚きもせずに、真っ直ぐな視線が上目遣いに見上げてきた。
「またやんのか?…擦り切れちまわねえのか?」
そんなに何度も突っ込んだりこすったりして、股間から生えるその肉棒に害はないのかと問う。
無論、虚無とも呼べるこの世界で生き残った以上、人間のような軟弱な作りはしていない。もし奴らのような、生き物と呼ぶべき存在の片割れであったのなら、あんなにも長い年月、地中の奥深くの牢に閉じ込められたまま生き伸びてはいなかっただろう。一体自分を何だと思っているのか、無反応のまま口を開いていると思しき風体からは、一片の手がかりも得られなかった。
「子分が欲しいんだろ?産ませてやるよ」
だから、てめえの好きな精液をその股間の口でたらふく飲めと言い放つ。
「そーやってできた験しはねえぞ?」
まあ、自分に会うまでこんなところにこんな穴を作った奴はいなかったから、はっきりとはわかんねえけど、と下腹を軽く撫でながら青い瞳の持ち主は呟いた。
セックスを強要されんとしているのに、まったく他人事のように受け止めているのは、今の場面に些かの脅威も感じていないからだろう。たとえ人間ではないという括りで一つにまとめられているとはいえ、相手とこちらには絶対的な差があった。
それが、何であるのかは不明だ。あるいは、わからないと言って現実から逃げているだけかもしれない。
実際、自らの正体すら正確に知らされていないのに、他人であるこの丸とトゲの物体がどんな力を持っているのかなど知るはずがなかった。そこまでの探究心はない。生まれる可能性など、更になかった。
「やってみなくちゃ、わからねえだろ」
ふん、と鼻でせせら笑う。
それに。
「こいつが好きだって言ってたじゃねえか」
ベルトのバックルを外し、ぐい、と中身を取り出す。
すでに硬くなったそれは、表に出るなり筋を膨らませ、空を目掛けてぴんと反り返った。
いつもならばそれに吸い寄せられるはずの双眸が、下からじっと真上の顔を凝視する。
「なあ」
音とともに開かれた口腔に、何が何でも突き入れて、出し入れしてやりたいと思った。
「何でそんなに、むしゃくしゃしてる風なんだ?」
直接的な指摘を和らげるように形容をぼかし、真下の青は訴えた。
苛立ちをこうして表面に出したのは、今日が初めてではない。いつもいつも、はるか地下の世界でも、押し伏せながら、突き入れながら、怒りに任せてその身体を貪った。否。それは憤りなどではなく、明らかな焦燥だったのだろう。
この、永遠にも近い刻を、邪魔する者を憎む心情がそうさせていたのだ。
「……っ」
そんなことを、わざわざ再認識する必要はない。
いつでも頭の中にある不安という名の負荷は、自身の五体を苛み続ける。精神的な支柱がぐらぐらと揺らぐように、絶対ではない時間の流れが訪れることを憎んでいた。
「……コイツをそこへ突っ込んだら、答えてやる」
何に苛付いているのかを教えてやると言って、交換条件を示す。
良いけど、と丸い生き物は言った。平然と、大した動揺もなくさらりと返す。その、何ものにも揺らがない性格が、焦りを感じている側に追い討ちをかけていることになど、露ほども気づかずに。
ぱたり、と靴底を横へ投げ出すようにして、足を広げる。
もっと高くそこを持ち上げろと要求され、抵抗も見せずに背中を地面につけた。
その股座を更に抉じ開けるように両手で押さえ込み、頭上から突き入れるように柔らかな秘部へ性器を捻じ込んだ。
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