水よりもはるかに濃い粘液をかき混ぜるように、執拗な音がそこから止め処なく発される。
人よりも更に弾力のある側面に叩きつける様に、大胆な動きで上下運動を繰り返す。
肉棒とは名ばかりの凶器を、最も敏感な内部へ押し込まれ、引きずり出される度にすすり泣くような声が絞り出された。
けれど、やめろと懇願する音だけはどうしても引き出すことができない。一方的な折檻を望んでいるわけではなく、無論拒絶したいわけでもないのだろう。ただ、肉体に及ぼされる過度の刺激に反応し、本能的に喘いでいるだけだ。
強烈な快感を得ているのはあちらだけではない。
力任せにおかしているというシチュエーション以上に、銜え込まれた箇所が逆に侵蝕を受けてでもいるかのような熱さを覚える。
マグマよりも熱く、芯を侵すように肌膚の内側へ食い込んでくる快楽の熱は、突き入れる都度、生身の肉塊に射精を強制させるほどの能があった。興奮の坩堝などという形容すら生温い、そこはすでに身体の一部でありながら別次元の空間と化していた。
皮膚の表面を覆う外気はひやりとするほどではないにせよ、暑さとは程遠い。不快ではない程度に温度があり、無風と思われる光景とは裏腹に、伝う汗はそれをなぞるような空気の動きを知覚した。
一体どちらが先に擦り切れてしまうかも定かではないほど激しい律動で内壁を穿ちつつ、脈打つ男根を一際深い位置へ突き当てる。締め付けてくる粘膜の壁を硬度を増した先端で数回突くと、収束した全身の熱の塊が最奥目掛けてそこから放出された。
際限なく溢れるものを容赦なく相手の肉壷へ注ぎ込み、やがて大きな息を吐き出すと、上からおかしていた者は身体を横へずらした。
下で成すすべなく秘所を貫かれ続けていた者は、形の良い小さな鼻をすすり上げ、何度も全身で荒い呼吸を吐き出している。小刻みな動きで翻弄されている間も、歯の根が合わなくなった口元からは堪えきれない悲鳴がいくつも零れていた。その小振りの青い宝石には反射的に溢れた涙が浮かんでいてもおかしくはなかったが、汗がそこへ流れ込んだかのように、それと判別できるような痕跡は見当たらなかった。
はあ、と途切れることなく大仰な呼気を吐きながら、転がっていた体勢を整える。股を開いた恰好のまま、ぺたりと脚を地面に下ろすと、まだ穿たれたままの鮮やかな割れ目からは中で吐射された白濁液が幾筋も糸を引いて流れ出した。
それらが溢れ、スローモーションのように地面に染みを作る過程をじっと見下ろしていたが、それにも飽きてしまったかのように、やがて男は簡単に身支度を整えると元いた場所へと帰って行った。
その、成人としては人並み以上に広い背に、自失したように茫然としていたはずの影から声がかけられた。
精も根も、あらゆる生命力を搾り取られるように陵辱されたにも関わらず、声調だけは何にも汚されていないと言いたげに、素に近い強さで後ろを見せた者の鼓膜を打った。
「おまえって」
一息つくような間が生じたことを悟り、その先を聞くことを拒否するつもりで大股に歩を進める。
なのに、聞きたくないと思っていた言葉を、忠実に思考は脳裏に記憶として留めてしまった。
「我侭、な」
おのれとは別個の自我から発された光は、軌道を逸れることなく魂の奥深くへ焼き痕を刻んだ。
|