無知の利。
「何だ、これ」
渡された紙袋の中から、同じ形状のものが仲良く連なって出てくる。
兄弟、というより双子か三つ子か四つ子か。
ビニール袋の上からモノを確かめるように、親指と人差し指で押す。
「駄菓子屋で売ってるラムネのお菓子じゃないよな」
確かにあれも袋が10個ほどつながっていた。
そうじゃない、と即座に否定。
材質はゴムだ。
間違っても食べるな。
「わかった、風船だな?」
あっけらかんと答える。
快活。
屈託皆無。
「違う」
埒が飽かない。
かといってこのまま下手な連想ゲームを黙認しているつもりもない。
「………だ」
ぼそり、と口端を幾分歪めて吐き出す。
照れや外聞とは無縁の存在と思いたい。
せめて、この瞬間だけ。
だが、その気苦労も徒労に終わり。
「こんどうツトムさんって誰だ?」
何かのギャグかというより、先立つのは異国の言葉への猛烈な先入観か。
訝かしむ視線を送れば、負けじと同様のものをぶつけられ、鼻白む。
「本当に知らないのか」
諾、との答。
頷きはゆっくり。
顎がわずかの曲線を描く。
「だったら、使わなくていい」
免除獲得。
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