「ケビンの奴は不貞寝しちまったし、どうだ、クロエ〜。二人で対談と洒落こまねえか?」 「…………」 「名づけて」 母子対談…! 「…………」 「…………」 「って、母子って何だ!!」 「…………」 「ふう〜っ、まあいい〜。とにかくくっちゃべろうぜ〜。暇な時間はトレーニングかおしゃべりで潰すと相場が決まっているからな」 「………(決まってない)」 「で、モノは相談だが、クロエよお〜。オレとケビンはどっちがモノホンのいい男だと思う?」 「スカーだ」 「お、即答かい。嬉しいぜ〜っ。理由もついでに言ってくれると嬉しいぜ」 「能力値すべてにおいて、スカーは遜色がない。どれも平均して、というのではなく特筆すべきはその変幻自在な戦闘スタイルにある」 「グフフフ〜。かわいいぜ〜っ、クロエ〜〜」 かいぐりかいぐり。 「…………」 ご機嫌のスカーフェイスに頭をかいぐりされて、成すがままのクロエ。いわゆる、茄子状態、ではない。 人の家のカウチで何をやっとんじゃ。 毛布を被り背中を向けて寝腐りながら、ケビン。 「つまり、おまえにとってのいい男ってのはルックスよりも、強いかそうでないかってことだな?」 「見た目もスカーの方がいい男だ」 『………!!!!』 「おいおいおい、聞いたかよ!オレは最高にいい男だとよーっ!」 誰に言っているのか、超ご機嫌。 思わず椅子を立ちあがって両手でガッツポーズ。すでに勝利の印。 「かわいいぜ〜っ、クロエ〜。こんなイー子をケビンのあほにくれてやるのは、勿体なかったなあ、おい」 だから、誰に言ってるのか。 「…………」 「無口なところも饒舌なオレ様と合ってるぜ。どうだ?今から家に帰るか!?」 スカー家。クロエの出身地(嘘)。 「それはできない。今はケビンのために尽力するのが仕事だ」 お誘い拒否。 よかったぜ。心底安堵しまくり。 クロエを持って帰られるなど、冗談ではない。 「わかってるぜ、クロエ〜。なあに、超人オリンピックが終わりゃあ、おまえも晴れて用済みよ」 「…………」 「どっかのナイトメアズのお偉いさんみたいによお〜っ、いつのまにか本誌からいなくなっちまうんだぜ〜っ。惨めだよなあ〜?」 「…………(確かに)」 「ケビンのホモ野郎は人気があるから出番はいつかは回ってくるだろうけどよ〜っ、オレたち一発屋は試合が終わればもう出番なんてモンは回ってこねえんだぜ?辛いよなあ〜っ」 「…………」 かなり実感がこもっているようで、スカーフェイスの口から聞くとまるで深刻そうに聞こえない。 クロエはただ肩を抱かれて黙る。 使い捨てキャラ。 キン肉ワールドではその酷ともいうべき非業な運命を負う超人は、結構稀じゃないほど存在する(笑)。 「どうせ隠居するなら住みなれた実家が良いぜ〜、クロエよお〜っ」 こっくん。 思案の末、応答。 ちょっと待てや、こら。 「クロエはオレといる」 思わず寝床から仁王立ち。 これ以上聞き捨てなるか。 「お呼びじゃねえんだよ〜っ、ケビン。てめえはよお」 しっしっとハエを払う仕草。 クロエの前でそれをやられりゃ、屈辱倍増。 なんだったらここで、マットはないが床に沈めてやろうか。 殺気びしばし。 再び静電気。 クロエの上着がほんの少し持ちあがった。 別の意味でもヒートアップ加速。 「乾燥した空気は風邪を引きやすい」 ぼつり、言い放ち、クロエはそそくさと窓を開けに行った。 残された似た者兄弟二人組は、延々室内で立ったまま火花を散らしまくっていたそうな。 誰か、止めてやれ。 わずかに半分冗談で、スカーフェイスは思ったとさ。 |