彼はずっとそこにいた。
彼は彼がつくられていく過程を黙視していた。
彼は名前を与えられた瞬間に個を持ち、彼という存在を認識した。
初めて声をかけた時、数拍置いて意味を理解しそれからギョッとしたような顔つきになった。
些細な変化すら興味深く、彼は彼からもっと自分とは違う部分を見出したくなった。
最初は単純な興味から。
しかし実際はそれを興させること自体が稀有であり、異常な事態であることを彼自身が自覚していた。
彼は彼に問われるままに自らの事情を話し、彼らの間には奇妙な友情が生まれた。
彼らは出生こそ異なるものの自分たちは同じなのだと。
自分たちは同一の条件下で活動可能な互いに二つとない存在であるという事実を理解した。