「今日付けで、おまえがリーダーを務めるグループに配属された」
名前を名乗ると、相手は首を傾げた。
「そういった報告は受けていないが」
頭の回転は速いらしい。
状況判断が速いのは結構なことだ。
「遅れているんだろう。おまえのアークスとしての活動実績を鑑みて、メンバーの増員を指示された」
それが私だ、と答える。
アークスと一言で言っても、役割は各々違う。
個別の能力はもちろんのこと、適性や経験。
クリアしたミッションの数や経歴、功績によって、他のアークスとの連携を必要とされる場合がある。
グループというのは、主戦力であるリーダーの補佐をしつつ、アークスとしての活動を行うメンバーで構成される共同体のこと。
自分が所属するのは、眼前のアークスが筆頭を務めるグループ。
情報を端末で確認し終え、男が振り返った。
「…よろしく頼む」
質問が幾つかあるだろうと予想していたが、新メンバーに対してさほど興味がないらしい。
見た目通り、内面も淡白な男なのだろう。
差し出された手を握り返し、視界を覆うフィルターの奥からじっと男を観察した。