「それは、どういう……?」
どんな意図があって訊いているのかと質される。
つり上がった目が、さらに角度を増してこちらを睨みつけてきた。
顔つきに凄みがあるのは、容姿だけの所為ではないのだろう。
「噂を聞いたからだ」
「………」
その一言ですべて合点がいったのか、男は視線をずらし、自嘲するように口端を持ち上げた。
「…残念だが、ルームメイトと恋愛をする気はない」
キャストの間で囁かれている噂を否定するつもりはないらしい。
しかしプロのアークスらしく、仕事と私生活はしっかりと分けて考えているのだろう。
「納得できなければ、別のアークスに変わってもらえるように手配するが…?」
辞退の報告をして、他のアークスを探せと。
「それでは困る」
肩を竦めると、怪訝な目つきで見つめ返された。
「私は、そのつもりで希望したんだからな」
アークスとしての実績を積む目的と並行して、男のコミュニティに関わろうと考えた理由。
「私は、今はフリーだ」
だから、新しいペアの相手を探している、と。
「……………」
聞くなり、男は双眸を見開いたまま閉口した。